取引先の倒産時に
「無担保・無保証人」で借り入れできる積立金制度で、
もしもの時に備えましょう!

取引先が突然倒産すると、代金の支払いが行われず経営に影響を受けることがあります。資金繰りのために急いで借り入れをしようと思っても、煩雑な手続きが必要で、結局借り入れできなかったとなると自社の支払い等にも困ってしまい深刻な経営難に陥る、最悪は連鎖倒産につながってしまうこともあります。
このようなもしもの事態に備えて加入しておきたいのが、経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)です。取引先が倒産したときに、無担保・無保証人で借り入れできる積立金制度です。
本記事では経営セーフティ共済の概要や主なメリットなどをお伝えします。

「経営セーフティ共済」とは?

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)とは、中小企業の取引先が倒産した際の連鎖倒産を防ぐことを目的に、昭和53年4月にスタートした共済です。国が全額出資している独立行政法人 中小企業基盤整備機構が運営している共済制度なので安心です。
経営セーフティ共済は、取引先が倒産してしまい、売掛金債権等が回収できず経営が困難になったときに無担保・無保証人で掛金の最高10倍までの範囲内で売掛金債権等相当額を借り入れできます。令和5年3月末時点で約62万の企業や事業者等が加入しています。

加入資格

経営セーフティ共済への加入資格は、継続して1年以上事業を行っている中小企業者です。会社または個人の事業者は、各業種別に資本金の額または出資の総額と常時使用する従業員数のいずれかに該当すれば加入できます。

業種 資本金の額または出資の総額 常時使用する従業員数
製造業、建設業、運輸業その他の業種 3億円以下 300人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
小売業 5,000万円以下 50人以下
ゴム製品製造業(自動車または航空機用タイヤ、チューブ製造業、工業用ベルト製造業を除く) 3億円以下 900人以下
ソフトウェア業または情報処理サービス業 3億円以下 300人以下
旅館業 5,000万円以下 200人以下

また、次のいずれかに該当する組合も加入できます。

  • 企業組合、協業組合
  • 共同生産、共同販売等の共同事業を行っている事業協同組合、事業協同小組合、商工組合

借入限度額

共済金の借入限度額は、以下の2つのいずれか少ないほうの金額です。

  • 回収困難となった売掛金債権等の額
  • 掛金総額の10倍(最高8,000万円)

借入額は原則として50万円から8,000万円まで、5万円単位で設定できます。

返済期間

返済期間は金額によって異なります。いずれも6か月の据置期間が設けられています。

借入額 返済期間(6か月の据置期間含む)
5,000万円未満 5年
5,000万円以上6,500万円未満 6年
6,500万円以上8,000万円以下 7年

留意点

経営セーフティ共済は、取引事業所の倒産によって回収困難な売掛金債権などに対する貸付制度です。一般の消費者を取引先とする事業者や、取引先に対して売掛金債権などが生じない事業者の場合は共済金の貸し付け対象となりません。

経営セーフティ共済のメリット

経営セーフティ共済への加入には、さまざまなメリットがあります。主なメリットをご紹介します。

無担保・無保証人で借り入れできる

経営セーフティ共済は、無担保・無保証人で借り入れできます。金融機関から融資を受けるときは、担保や保証人が必要になる場合がほとんどです。無担保のビジネスローンもあります。しかし貸す側には貸し倒れのリスクがあるため、担保ありのビジネスローンに比べると借入金額の上限が低く、利率が高いというデメリットがあります。
経営セーフティ共済は、担保も保証人もなしで借り入れできます。貸し付け額の上限は先ほども触れましたが、以下の2つのいずれか少ないほうの金額です。

  • 回収困難となった売掛金債権等の額
  • 掛金総額の10倍(最高8,000万円)

借入額は原則として50万円から8,000万円までで、5万円単位です。取引先の倒産という一大ピンチの時に、無担保・無保証人で借り入れできることが大きなメリットです。なお、借り入れは無利子ですが、共済金の10分の1に相当する額が払い込んだ掛金から控除されます。

取引先の倒産後にすぐ借り入れできる

取引先が倒産して売掛金などの回収が困難になったときは、その事業者との取引関係が確認でき次第、すぐに借り入れ可能です。
共済金の借り入れを受ける際は、まず次の必要書類を準備しましょう。

  • 売掛金元帳の写し
  • 未決済手形、小切手の原本(被害額に含まれる場合)
  • 取引関係が確認できる帳票類の写し

売掛金元帳を作成していない場合は、売上帳に類する書類の写しを用意しましょう。取引関係が確認できる帳票類とは、受取手形期日帳、売買契約書、工事請負契約書、確定申告書一式などです。必要書類は業種業態や取引内容によって異なる場合があります。
また、中小機構の様式書類「共済金貸付請求書」「倒産した取引先事業者との取引実績表」「償還金預金口座振替払に関する申出書」はホームページ上の専用フォームから請求できます。このほかにも条件に該当した場合のみ必要な書類があるので、速やかに準備しましょう。

掛金は損金または必要経費に算入できる

確定申告の際、共済の掛金を法人は損金、個人事業主は必要経費に算入できます。掛金は前納も可能です。
前納期間が1年以内であれば、支払期の損金または必要経費として算入できます。掛金を前納した場合は、前納月数1か月あたり1,000分の0.9に相当する金額が前納減額金として支払われます。
掛金は月額5,000円〜20万円まで自由に選べて増額や減額も可能です。
(減額については、一定の条件が必要になります。)

解約時は解約手当金が受け取れる

掛金を12か月以上納めていれば、解約時に掛金総額の8割以上が戻ります。40か月以上納めている場合は、戻ってくる掛金は全額です。
取引先の倒産に備えながら、解約手当金はしっかり受け取れるところも経営セーフティ共済のメリットです。(税法上、法人の場合は益金、個人の場合は事業所得の収入金額となります。)
ただし、掛金が12か月未満であれば、掛け捨てとなるので注意しておきましょう。
解約手当金は解約理由によって3種類に分類され、それぞれ支給率が異なります。

  • 任意解約…共済契約者が任意でいつでもできる解約
  • みなし解約…個人事業主の死亡や法人(会社など)の解散・分割の際、その時点で解約されたものとみなす場合
  • 機構解約…掛金を12か月分以上滞納した場合に中小機構が行う解約
掛金納付月数 任意解約 みなし解約 機構解約
1か月〜11か月 0% 0% 0%
12か月〜23か月 80% 85% 75%
24か月〜29か月 85% 90% 80%
30か月〜35か月 90% 95% 85%
36か月〜39か月 95% 100% 90%
40か月以上 100% 100% 95%

掛金を12か月以上滞納した場合は機構解約となり、任意解約より払戻金が少なくなります。事業経営の悪化などにより掛金を納付することが難しい場合は、掛金月額を減額することも可能です。(減額は事業経営の著しい悪化などの一定の条件が必要になります。)
解約時にできるだけ高い支給率となるよう掛金の滞納は避けましょう。

一時貸付金の借り入れも可能

経営セーフティ共済は、取引先事業者の倒産による倒産の連鎖や経営難に陥るのを防ぐためのものです。取引先事業者が倒産していなくても、臨時に事業資金が必要になったとき、解約手当金の範囲内で借り入れができます。急に資金が必要になったものの、経営セーフティ共済を解約したくないときに、一時貸付金の借り入れが可能です。
借り入れ限度額(760万円)は、任意解約の場合に支払われる解約手当金の95%の範囲内で、すでに借り入れや一時貸付金がある場合、その分が控除されます。
たとえば掛金納付月数が24か月の場合、機構解約の払戻金は「掛金総額×80%」です。一時貸付金の借り入れ限度額は「掛金総額×80%×95%」となります。

共済金の借り入れが受けられるケース

取引先が倒産して借り入れが受けられるケースと受けられないケースがあります。次のようなケースであれば共済金の借り入れが受けられます。

  • 法的整理
  • 取引停止処分
  • でんさいネットの取引停止処分
  • 私的整理
  • 災害による不渡り
  • 災害によるでんさいの支払不能
  • 特定非常災害による支払不能
共済金の借り入れが受けられるのは、倒産日から6か月以内です。なお、夜逃げや内整理(ないせいり)などの場合は取引先の倒産についての事実確認が困難なことから、借り入れが受けられません。

まとめ

経営セーフティ共済は、取引先が倒産して自社の資金繰りに影響を及ぼしたときに大きな力となります。特に、無担保・無保証人で掛金の最高10倍(上限8,000万円)まで借り入れ可能な点は資金調達の大きなハードルを取りのぞく助けになります。また、掛金は損金や必要経費に算入できるため、税制優遇も受けられます。
40か月以上掛金納付すれば100%の払い戻しがあるため、安心を手に入れながら将来のための資金を確保することも可能です。
取引先の突然の倒産による連鎖倒産や経営難を防ぐため、経営セーフティ共済への加入を検討しましょう。無担保・無保証人での借入が可能なこの制度は、あなたのビジネスをより安定したものにしてくれます。